- アフリカを訪ね歩く
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広瀬
アフリカの風景というのは、想像するからに雄大でしょうね。西川
もう本当に空がきれいだったりします。風景がすごく素敵なのは東の方で、ケニア、タンザニア、ジンバブエとかきれいですね。東の方は動物王国で、僕らはジープを借りてサファリするような余裕はなかったけど、それなりにアフリカらしさを楽しめました。それと、アフリカの人って、すぐに踊ったりというリズムもあるし、とにかく明るい。広瀬
どんなものを食べていたんですか。西川
朝はパンです。イギリスの元植民地だったらイギリスの食パン、フランスの元植民地だとフランスパンがあって、基本的にどこの国も暴動が起こるのを防ぐために、パンはいちばん安い値段で売っています。あとの食事は、西アフリカではご飯が主食ですね。玉ねぎとトマトと羊肉が少しだけ入っているようなスープを、ご飯にかけて食べます。東の方へ行くと、トウモロコシの粉を練ったものが主食で、ネタネタしたすいとんみたいな塊に、同じようなソースをかけて食べます。だいたい、どこへ行ってもそれはあるけど、それしかないって感じでした。広瀬
生野菜を食べたくなりませんでしたか。西川
食べたくてもないんですよ。だから、マンゴーやオレンジ、バナナからビタミンを取るようにしていました。広瀬
アフリカでは英語は通じませんよね。西川
西アフリカは、ホテルもフランス語しか通じないです。片言のフランス語で買い物したり移動したり。質問は何とかできても、返ってくる言葉がわからない。英語が通じないので、旅はしにくかったですね。
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広瀬
危ない目には合わなかったですか。西川
安宿はだいたいダウンタウンの危ない所にあるので、夜は出歩かないようにしました。何回かは危ない目にあったけど、とにかくお金を取られたらそこで旅が終わってしまいますから、慎重でしたし、緊張していましたよ。歩く時はいつも後ろに目を配りながら。広瀬
病気は大丈夫でしたか。西川
高熱が二人とも何回か出て、病院に行くかどうかってなりましたけど何とか大丈夫でした。旅行前に頼んで、注射器数種類と強力な抗生物質はもらっておいて、どうしてもダメだったらこれをという指導も一応受けてから行きました。広瀬
やはり、かなりハードな旅だったんですね。西川
そうですね。でも、まあ慣れです。それに、いろんな意味で強くなりましたよ。たいへんな状況の中で、アフリカの人々が生きている姿を目の当たりにし、過酷な体験もした。そうすると、それが自分の基準になるから、余程のことでないと驚かないし、嫌にもならない。貧しい国を旅する人たちって、そうやって自分の基準をつくっているようなところがあります。広瀬
美しい風景も、貧しい光景も、厳しい現実も、アフリカで体験したさまざまなことが、西川さんの体の内側に入っていったことと思います。そうしたことも、西川さんらしさをつくってきた一つでしょうね。西川
長い間には、そういった体験も自分に影響してくるんだと思います。でも、ある展覧会の企画で、自分で文章を書かなきゃいけなくて、僕はアフリカについて書いたんですけど、いいことが出てこないんです。書いている文章が、作品とはまったくつながらない。結局、僕が思っているのは、“悲しい”ってことなんですね。アフリカは自然や動物に恵まれた一方で、西欧から置き去りにされた人たちであり、国としても崩壊していたり、圧倒的な貧しさや矛盾を抱えている。だから文章を書こうと思うと、そういうコアなすごい世界のことばかり思い出されるんだけど、それを作品では到底表せない。物書きだったら、きっとその体験を書けるんだろうけど、陶芸家に表現はできないだろうなと思いました。 -
喜びも悲しみも
自分の内面に得ていく
西川 聡 陶展
2012年11月16日(金)〜11月20日(火)
桃居 http://www.toukyo.com
03-3797-4494
東京都港区西麻布2-25-13