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知人から頼まれたことが
帯留め制作のきっかけ
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外山
帯留めについて伺いたいのですが、アンティークの切子の帯留めというのはあるんですか?小川
詳しくないですけど、あまり聞いたことはないですね。外山
小川さんが切子で帯留めをつくろうと思ったきっかけは何だったのですか?小川
独立してからアルバイトもしていたんですけど、そこを辞めて切子だけでやっていこうとなった時に、上司の方々が切子の花瓶やグラスなどを注文してくださって、その中の一人の方が着物好きで、帯留めをつくってほしいと言われたのがきっかけです。外山
そうでしたか。小川
でも、その時はまだ私も着物に興味がなくて、その方から帯留めの説明をしてもらって、できるかどうかわからないけれど、どういうものがほしいのかをとりあえず聞いておいたんです。ガラスでパーツ本体はつくれるんですけど、それをどうやって帯留めの形にするかということを迷っている時に、銀線細工の松原智仁さん※3が切子の帯留めに合わせて台をつくると言ってくれて。それから帯留めをつくり始めたんです。外山
松原さんとの出会いがあって、帯留めが実現したんですね。既成の金具に貼り付けるのでは嫌だったわけでしょう?小川
そうです。どういう物を使うか、金具は大事だということは前々から思っていたので。外山
何事もフィニッシュは大事ですよね。小川
えぇ。やるならちゃんとやらなきゃと。
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外山
帯留めをつくってみて、いかがでしたか?小川
最初は、パーツが小さいので持っているのも大変でした。グラスくらいの大きさが一番やりやすいんですけど、帯留めは小さいので作業中に落としそうになったりして、当初はあまりやりたくないと思っていました。頼まれたので3つだけつくって、それで終わりにするつもりだったんですけど、すぐに松原さんから「これはいいよ」と言ってもらえて。外山
松原さんは、金属でいろんなものをつくられる方なのですか?小川
そうです。銀線細工作家としてオリジナルの帯留めもつくっています。松原さんと私は、和装に詳しい裏地桂子さん※4が企画されたイベントに参加していて出会ったのですが、その後に裏地さんに切子の帯留の話をしたところ、つくってほしいと言ってくれて。その時に私は楕円しかつくっていなかったんですが、四角形がほしいということでつくってみたら、とても気に入ってくれました。その内に、松原さんが伊勢丹の帯留めフェアに参加するから、私も一緒に出さないかということになって、そこで公に15点くらい出品することになったんです。外山
帯留めは使うものだから、松原さんのようにつくり慣れている方と組むというのは、いい出会いでしたね。小川
わかってもらえているので有難いです。ほとんどお任せなのですけど、いつも素晴らしいお仕事で、銀細工あっての切子帯留めです。外山
きっと小川さんは、そういう良縁を呼ぶ方なのですね。大げさにしなくても自ずと道が開けていくというか。小川
運が良いというか、いつも周りに良い方が集まってくれるなぁと思います。まさか帯留めをこんなふうにやっていくとは思ってなかったですから。外山
小さな帯留めと、伝統工芸展に出品するような大作とでは、制作における気持ちは違いますか?小川
違いますね。帯留めは今は慣れてきていろいろできるようになったこともあって、遊び心が中心です。自分も着物を着るようになって、帯留めのことがわかってきましたし、こういうのがあったらかわいいとか思いながら、楽しい気分でやっています。大きい物はというと、かなり真剣モードですね。外山
両方をやっていくのは、いいことでしょう?小川
1つしかできないより、いろんなことを並行してできる方がいいと思っています。 -
いくつもの出会いに育まれて
帯留めは定番作品に
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6月の展覧会は
涼を呼ぶグラスやぐい飲みを -
外山
もうすぐサボアでの展覧会が始まりますが、どんな展覧会を考えていらっしゃいますか?小川
6月なので夏っぽい感じで、サボアさんの雰囲気に合わせたいと思っています。涼を呼ぶ、寒色系などが多くなりそうです。外山
今回ぜひやってみたいことってありますか?小川
いろいろなぐい飲みですね。夏に夕涼みしながら美味しい飲み物を飲む、そういうグラスやぐい飲みを出したいです。外山
それは楽しみです。今日はどうも有り難うございました。
インタビューを終えて
飾らず、媚びず、焦らず、、、後味の良いお人柄が印象に残りました。
とは言え、小川さんはきちっとご自分を見据えています。
その作品は凛として、長い修行を重ねた伝統技術に裏づけされています。
こちらも「絶やすことのないよう伝えていきたい!」という気持になりました。
捕われることなく、自分が好きだと思うものを作り続けてほしいガラス作家です。
三代続いた生粋の江戸っ子が、こよなく愛する「江戸切子」
今回の個展をきっかけに、今後が楽しみなご縁となりました。
外山恭子
1978年1月 サボア・ヴィーブルオープン時より商品コーデディネイト、
展覧会企画などに携わり、現在に至っています。
1980年代は、器と料理"Kisso"の店舗運営にも参加。献立に見合った器のコーディネイトなども担当。
1990年代は、ヨーロッパのアンティークを買い付け、新たな取り扱い商品として品揃え。
ギャラリーでは、日本の工芸作家を始め、平面・立体などのアート作品など、
ジャンルを問わず展覧会を開催しています。
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