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道具は上手に
つきあっていくもの
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根本
昨年の展覧会の時に感じたことですが、2つ目のフライパンを求められる方がいらっしゃる一方で、鉄製のフライパンはまだ使った経験がない、という方も多くいらっしゃいました。成田さんの周辺ではいかがですか。成田
工業製品のフライパンと比べたら、僕のフライパンは安いものではないかもしれません。入手するまでに、ちょっと貯金してという方もいらっしゃるし、展覧会の初日に1個買って、翌日また来て買ってくださるような方もいらっしゃる。このフライパンがツボにはまる方は、使いやすくて感激したと言ってくれます。根本
私も実際に使っていて、手持ちの軽さとか、焦げないとか、アフターケアも楽であるとか、使いやすさをよくわかっているのですが。あまりにもテフロンのフライパンが普及していて、鉄のフライパンのよさをご存じない方も多く、よく言われるのは、重い、焦げる、錆びるというマイナスなイメージです。成田さんご自身は、このフライパンのどこがいちばんよいところだと思われますか。成田
やっぱり、料理が美味しく仕上がるってことです。根本
食材に対しての熱の伝わり方は、まったく違いますよね。成田
鉄は焦げると思っていたり、使う前から不安要素を感じている人にお伝えしたいのは、道具は使った瞬間から100%の力を発揮するわけではなくて、使う人と一緒に育っていくということです。この道具はこうやって使うといいんだとか、使っていくうちにわかってくる。そういうことで道具に愛着も湧くし、料理を美味しくつくることができるようになるんだと思います。根本
それと、見た目のチャーミングさもすごくあると思います。丸さとか、長すぎない持ち手とか。それでいて持ち手は、調理している間は鍋つかみを使わなくてもいいように、熱を逃がすデザインになっていて、熱くなり過ぎない。何回も続けて玉子焼きをしたら、熱くなってしまうだろうけど、家族分の卵焼きを一度に焼くくらいならほぼ大丈夫です。何より、日本のキッチンに鉄の色や素材感って合いますよね。成田
日本のものは、電化製品にしても繊細ですよね。僕自身は、美しいと思ってつくっているわけではなくて、日本人の繊細さとか几帳面なところが、僕なりに出せればと思っています。根本
現在、片手フライパンは何種類ありますか。成田
いちばん小さいサイズは15㎝で、最近、30㎝といういちばん大きいサイズを出して、全部で7種類になりました。ただ、30㎝サイズはつくるのがすごく大変だったので、今後はセミオーダーにするかもしれません。
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根本
30㎝というのは、要望があってつくり始めたのですか。成田
はい。大きいサイズの要望は結構あります。僕のフライパンは底面が割と少ないので、どうしても平面をほしくなるようです。でも、立ち上がりが緩やかなカーブになっているので、そこも見た目より平面的に使っていただけると思います。根本
サイズによっては振りやすいし、ソース系のものも調理しやすいしという、ほかのフライパンと違う利点もありますね。成田
フライパンは皆さん振りたがるんですけど、僕のフライパンは、あまり振る必要はないと自分では思っています。根本
確かに、焼きそばをつくる時も、振らずにささっと炒められますね。成田さんご自身は、どんなふうに使ってらっしゃいますか。成田
僕は肉を焼いたり、お好み焼きとか餃子を焼くのも好きですね。美味しいですよ。根本
最初にフライパンを発表してからどのくらい経ちますか。成田
5~6年です。最初の頃に買ってくださった方が、「これで焼くと、ベーコンがすごく美味しいの」と仰っていると、ギャラリーの方が教えてくれました。根本
使い込んでいくと、どんなふうになりますか。成田
油が焼きついて、ちょっとキツネ色っぽく、黒っぽくなったりしていきます。時に酸の強い食材を調理すると、黒いところが剥げて部分的に銀色が出ることもあります。調理後の洗浄は、僕は清潔なのがいいと思うので、この頃はガンガン洗ってくださいと言っているんです。以前は、あまり洗剤は使わずにタワシでとか言っていましたが、油をきれいに落とし切ってから使っても、くっついたり焦げたりしないことがわかったので、最近はしっかり洗って使うことをお勧めしています。 -
日本人の繊細さ
几帳面なところを大事に
成田理俊作品展
2012年11月23日(金)〜28日(水)
思い描く形があっても実現できないことが常々。
そして、大概はまた同じ形ができる。
素材や技法、技量の制限がある中、失敗を重ね、
それが記憶となり、できなかったことを
一つ一つできるようにしていく。
そんな繰り返しです。
ー 成田理俊
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03-3573-3417
東京都中央区銀座5-5-13
●地下鉄 銀座駅B6出口より3分