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伝統的な技法を生かした
シンプルなフライパン
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根本
成田さんのフライパンができあがるまでの工程を、おおまかに教えていただけますか。成田
まず材料屋さんから買ってきた、サブロクという縦横1800 × 900mmくらい、厚み1.6mmの鉄板から、フライパンの器をつくるために円を切り抜きます。それをきれいな丸に削って、形を整えて、コークス炉の中で熱して焼き肌をつけます。それからハンマーとかを使いながら湾曲させて器をつくります。持ち手の部分は、異形鉄筋*7というゴツゴツした丸棒を叩いて平らに伸ばし、成形して、最後にリベットでかしめて器と接合します。その後、ぐらつきや歪みがないかを見て仕上げ、ワックスを塗って完成です。かなり大雑把な説明で、細かなことはまだまだたくさんあるんですが。根本
今、簡単に説明してくださった作業の一部を、先ほど実際に拝見しましたが、整えると言っても、私が数えたところだけで400回以上叩いていました。それをすべての工程において繰り返していくわけですから、非常に時間もエネルギーも必要。それにしては、価格は良心的に思えますが。成田
自分が買える値段というのが基準にあるので、あまり高くしてしまうと、道具としての本質がちょっとわからなくなってしまうような気がするんです。根本
手を抜かないものづくりだなと感じました。手間はかかっても、かしめることは、成田さんのフライパンのデザインであり、方法論であり、よいところですね。かしめを見せることによって、しっかり留まっていることがわかり、道具に対しての安心感も湧きます。成田
フライパン自体は今のものですけど、伝統的な技法は守り続けたいという気持ちがあります。溶接ではなく、リベットをかしめているのには、そういう意味もあります。フライパンは丸に棒というシンプルな形なので、ここがデザインポイントにもなりますし。根本
材料は、基本的に市販の建築資材を入手されるのですか。成田
そうです。普通に鉄工所が仕入れる一般的な鋼材などです。
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根本
先ほどもフライパン返しの材料が、この鉄の棒なのって驚いたのですが。平らな鉄板からつくれば手間は減るけれど、この棒を材料に使った方が、材質的に強度を出せるということでしたね。だから、まず棒を平らな形に整えるという裏方的な仕事が必要になる。成田
手間は増えますけど、僕自身は、工業製品を材料にして、自分の作品をつくっているというのが、ちょっと納得できない部分で。だから、織りの人のように、草から繊維を取って糸にしてとか、材料から自分でつくるということに、すごい憧れがありますね。根本
それは材料の特質的に向き不向きというのがあって成り立っていることですし、鉄にオリジナリティはないかと言ったら、そうではないですよね。叩くということでも、人力と機械による動力との違いもあるでしょうし。成田さんの仕事は、人力の部分が多いですよね。成田
人力が圧倒的ですね。あと、耳をふさいでしまうと、作業ができなくなってしまいます。というのは、個人的に、五感を頼りに、というか大切にして制作しているところが結構あるんですね。本当はいろいろと防護などをしなくてはだめなのですが。根本
それは先ほど作業を拝見していて、本当に驚きました。熱して赤くなった鉄を叩く音と、冷めた鉄を叩く音は、まったく違うんですね。冷めて締まっていくと、音も変わっていく。その音を聞きながら、成田さんは仕事の仕上げを判断していらっしゃる。鉄が、五感的な部分をこんなに必要とする素材とは思ってもみませんでしたし、聞くということで判断していくとか、完成度を意識するというのは、おそらくほかの素材ではあまりないことだと思います。 -
鉄の音を聴く
五感重視の制作
成田理俊作品展
2012年11月23日(金)〜28日(水)
思い描く形があっても実現できないことが常々。
そして、大概はまた同じ形ができる。
素材や技法、技量の制限がある中、失敗を重ね、
それが記憶となり、できなかったことを
一つ一つできるようにしていく。
そんな繰り返しです。
ー 成田理俊
» エポカ ザ ショップ銀座 日々
03-3573-3417
東京都中央区銀座5-5-13
●地下鉄 銀座駅B6出口より3分