panorama

Exhibition Report / Reported by m.makino

安齊賢太展 2014年2月21日(金)〜26日(水) / エポカザショップ日々/銀座

ギャラリー日々で開かれていた、安齊賢太さんの個展を見に行きました。

陶磁器の一つに、陶胎漆器(とうたいしっき)というものがあります。
その昔、湿度環境の違う国へ木胎漆器を運ぶ代わりに作られていたなどと言われているのが陶胎漆器です。
漆器と言えば、通常木に漆を施してあるもので、これを木胎漆器と言います。
それに対し、陶磁器に漆を施し装飾したものを陶胎漆器と言います。

安齊さんの作る黒い器は、この陶胎漆器を思わせるような作品が特徴です。
"思わせるような"と書いたのには実際の制作工程を伺うと、木胎でないのはもちろんのこと、陶胎とも言い切れないところがありました。

安齊賢太展@エポカザショップ日々/銀座 2014/2/21(金)〜2/26(水) 会場風景

陶胎漆器は陶土に漆だけを施すところを、安齊さんは土に糊剤として漆を入れるという方法を取り入れ現在の作品を作られています。
何度も塗っては磨き、塗っては磨き、そして焼成しているそうです。
黒いボウルを手にしました。片手で持ったらちょっと余るほどの大きさなのに、とても軽い。
何度もという言葉を聞くと勝手に重たいイメージを持ってしまったのですが、実際にはとても軽く、本当に陶胎なのだろうか?と驚きました。それが作品の第一印象でした。

安齊賢太展@エポカザショップ日々/銀座 2014/2/21(金)〜2/26(水) 会場風景

panoramaのインタビューに書かれていた「泥団子の様な」という感触は、泥団子を実際に触ったことが無いので解らないのですが、漆よりも落ち着いて、そして陶器よりも柔らかく感じられました。
磨き度合の個体差はありますが、程よい艶感は手によく馴染みます。
お好きな質感の作品を見つけて使い込んでいくと、経年の変化を楽しむことが出来ると思いました。

安齊賢太展@エポカザショップ日々/銀座 2014/2/21(金)〜2/26(水) 会場風景

黒のシリーズには、ボウルや大きな壺や大小の花器類の他に、たたら作りで土を締めて作られた板皿や飾り台もあります。
こちらはボウルの時とは変わって、まったく違う重みを感じました。
実際に持ってみると見た目以上に重く感じるので、安齊さんに聞いてみると、たたらで作ることで土がよく締まっているからとのことでした。
シンプルな形の飾り台は、あまり歪むことなく安定性を感じるのはその為なのかと感心しました。

安齊賢太展@エポカザショップ日々/銀座 2014/2/21(金)〜2/26(水) 会場風景

安齊さんの作品には黒に対比するように、白い作品があります。
こちらは黒い作品の制作方法とは違うとのことですが、その工程を伺うと負けず劣らずとても手が込んでいました。
土の目を埋めるように、何度も違う土を塗り重ねたあとに釉薬を施したり、焼成の回数も多かったりと、とても手間と時間をかけています。
また同じ白でも、土や釉薬にも変化を見せているものもあり、同じ白でも変化に富んでいました。

安齊賢太展@エポカザショップ日々/銀座 2014/2/21(金)〜2/26(水) 会場風景

黒い器も含めてですが、多くのアイテムが展示されていました。
「今はいろいろと舞い踊っていますが、そのうち王道を進んでいきます。」と、冗談めかして笑って話されていた安齊さんは、独立をされてからまだ数年。どの道に絞り込んでいこうかと思案されているのでしょうか。
これから先、今以上に手の込んだことをされるのか、それとも今の形を極めていくのか、今後がとても楽しみな作家さんで、作品とともに見ていきたいと思いました。

Reported by m.makino