panorama

Exhibition Report / Reported by m.makino

浜名一憲 個展「壺と海の漂着物」2014年11月27日(木)〜12月09日(火) HidariZingaro/中野

「佇まいを大事にしているんです。」
ご自身の作品について、なにか求めている形などがあるのですか?と聞いた時、
浜名さんはそう表現されました。特別に考えてはいないけれど、ただ作品がもつ佇まいを大事にしたいと。

浜名一憲 個展「壺と海の漂着物」2014年11月27日(木)〜12月09日(火)  HidariZingaro/中野 会場風景

紐作りで作られた茶碗、皿、大きな壺。
どれ一つ同じものがなく、それぞれが放つ強烈な個性。
使うことの融通性など垣間見ることなく、けれど、とても安定感を感じるから不思議でした。

浜名一憲 個展「壺と海の漂着物」2014年11月27日(木)〜12月09日(火)  HidariZingaro/中野 会場風景

浜名一憲 個展「壺と海の漂着物」2014年11月27日(木)〜12月09日(火)  HidariZingaro/中野 会場風景

作られた作品と一緒に飾られた海からの漂着物。
それらは作ろうとして出来たカタチではなく、自然に出来た姿カタチ。
作品とは対照的な工程を経てきていても、それぞれが放つ強烈な個性は同じ。
そして同じく感じるのは安定感。

浜名一憲 個展「壺と海の漂着物」2014年11月27日(木)〜12月09日(火)  HidariZingaro/中野 会場風景

搬入時に壊れてしまった漂流物もあったと言います。
言い換えれば、それは浜名さんの手によって二次加工されたもの。
だけど、それはあたかも最初からそうであったような安定感を感じ、面白いなと思いました。

浜名一憲 個展「壺と海の漂着物」2014年11月27日(木)〜12月09日(火)  HidariZingaro/中野 会場風景

浜名さんの人生歴も面白いです。
農業高校、アメリカ留学、古着の収集、個人バイヤー、スニーカーショップ経営、
レストラン経営、漁師、アンチョビ製造販売、そして陶芸にたどり着きます。
浜名さん自体が漂着物の様に変化しています。
陶器で作った大きな逆さ足のオブジェを、浜名さんはそれを時々砂浜に持っていって置くのだそうです。
そうして、逆さから見ると地球に生えた足みたいに見えて面白いのだといいました。
もしかしたら何十年後、大きな足のオブジェの漂着物が見つかるときが来るのかもしれません。

海の側に住み、海を見て、陶芸をし、アンチョビをつくり、時に流れ着いた物を拾い集める。
漂着物は、海水に洗われ変色し、傷つき、錆びる。
ガードレールが海風、海水にあたり錆びて朽ちたカタチとなる。
どの時点であっても、浜名さんが手にした時や見せようと思った時、
漂着物が持つ佇まいは完成するのかもしれません。

佇まいと言えば、作品の中で浜名さんの作風とは明らかに違う小さな鳥の作品がありました。
ディテールがあまりにも違うので質問をしたら「それは娘が作ったんです。」とのこと。
くちばしの鋭さと言い、翼の角度と言い、とても緻密に作られています。
すでに親を越えた佇まいを醸し出していましたので、将来が楽しみであります。

浜名一憲 個展「壺と海の漂着物」2014年11月27日(木)〜12月09日(火)  HidariZingaro/中野 会場風景

浜名さんは、使われている釉薬について「鉄系」という言い方をされます。
普通、きちんとした釉薬名で話される方が多い中、鉄系という表現はめずらしいと感じました。
ほとんどの作品に使われているそれらの釉薬は、
砂浜に辿りついた漂着物への憧れから来ているのかもしれません。
無理に形作ろうとせず自然な紐作りで形を作り、そこに自分の描きたいものを描き、色を重ねる。
無理のない状況が独特の佇まいを作り出す様な、そんな風に感じました。

浜名さんの今の活動には、海との関係は切っても切れない関係性があります。
そんなことを考えた時、ふと気づいてしまいました。
名前が「浜名」なんだと。単なる偶然ととるか、必然ととるかは見る人次第。

浜名一憲 個展「壺と海の漂着物」2014年11月27日(木)〜12月09日(火)  HidariZingaro/中野 会場風景

Reported by m.makino