panorama

Exhibition Report / Reported by m.makino

田淵太郎「田淵太郎・竹下鹿丸 二人展」
2012/6/16(土)〜6/26(火)
» うつわノート/川越

羽生野亜「羽生野亜展」
2012/6/15(金)〜6/19(火)
» @桃居/東京

2012年6月は、panoramaにコンテンツのある作家さんたちの展覧会が目白押し。
今回は、四人の個展が同時期に開催をされたので、ニつに分けてリポートをします。
前半は、田淵太郎さん(磁器)と、羽生野亜さん(木工)
後半は、小西潮さん(レースガラス)と、小川郁子さん(ガラス切子)

まずは、うつわノートさんで開かれていた、
田渕太郎さんと竹下鹿丸さんの二人展に出掛けました。
うつわノートさんは、川越市にあり五百羅漢で有名な喜多院のそばにあり、古い洋館を改築したギャラリー。
お部屋は洋間、和室、縁側、お庭などがあり、訪れるだけでも楽しい時間を過ごせます。

会場風景

田渕さんに会うのは、2011年11月桃居さんで開かれた、竹内紘三さんとの二人展以来。
田淵さんは、短髪に整えられた髭面に眼鏡。と書けば強面に感じるけれど、
その笑顔は、屈託のない優しい目をしています。
お久しぶりです。いつぞやはどうも。なんてところから、お互いスタート。

田淵さんの磁器は、白磁を薪窯でさやに入れずに焼成。
灰をかぶった器は、一つとして同じ色姿をしていません。
以前のリポートで妖艶であると評しましたが、そのイメージは今回も変わらず、 白や灰色、時には黒。
青白く、薄紫から赤紫に、艶無しから艶有りへと、様々な変化が見て取れます。

薪窯で焼くと言うことは、磁器の真っ白な器と言う規制概念から外れます。
けれど、それは毎回が冒険で面白味があるということ。
白磁に、薪窯。どこまでのことが自分に出来るのか、試してみたいと田渕さんは言います。

会場風景

展示されていた大きな平皿には、亀裂が入っていました。
ご本人は、それは焼く前から解っていたといい、
亀裂をどこまで表現として取り込むのか、
窯変でどのような変化を見せることが出来るのか、
その可能性すら楽しんでいるようでした。

会場風景

同じくその可能性を見て取れるのはこちらの小さな花器。
オキという薪などが燃えて真っ赤になった炭火に置かれた花器は、
灰をかぶり白から黒へと変化を見せます。
もう一方は白く、白の奥には仄かに見え隠れする青の窯変を有する作品です。
どちらも素敵で、一対で見とれてしまいました。

会場風景

湯呑みはともかく、急須は細かな装飾が目をひきます。
もちろん、それも薪窯。
「 ここまでの細かな事を、自分でもしなくていいんじゃないかと思うんですけどね」と田淵さん。
私には、それが「冒険したいんです。」に聞こえました。

この二人展のお題は、白磁VS焼締。お相手は竹下鹿丸さんという益子の作家さん。
二人は同じ1977年生まれ。
竹下鹿丸さんは、益子の土を自ら掘り、薪窯での焼き締めを主に制作しています。
その土の色は、鉄分を含んだ黒がしっかりとして、かっこいい存在感を出していました。

会場風景

竹下さんの作品群の中に、ほんの少しの白磁の作品を見つけました。
田淵さんのそれとは、また違う柔らかさを感じる器です。
お互いの作品を「綺麗に作ってあるな~と思う」と話していた二人。
いつか、二人の白磁対決も見てみたいものです。

会場風景

続いては、桃居さんで開かれていた羽生野亜さんの個展。
羽生さんにお会いするのも、作品を拝見するのも初めて。
作品は、板皿やスチールフレームを利用した飾り台、椅子などが展示されていました。

会場風景

「なにかを飾る装置」そう言いながら、1つの台座の様々な展開を見せてくれました。
スチールの角度を変えたり、棚板の位置や向きを変えたりして、何パターンにも使用することが出来る。
まさにいくつもの機能を持ち合わせた装置でした。

会場風景

座面に木材やクッション材を併用した椅子は
骨組みとなる溶接も3年ほど前から、ご自身でされていてるのだそうです。
そのひとつに座ってみると、 見た目のシャープさとは裏腹に、ゆったりとした座り心地を感じます。

会場風景

板の染色には、草木染の染料を使用していて、
塗った染料を落とすときに板を水洗いや乾燥をさせるのですが、
その段階で板が割れてしまったり、歪んでしまうものもあるとのこと。
木と水という、自然の素材がぶつかりあい、作品としての形を成しているかのようでした。

会場風景

羽生さんは逆目(さかめ)という、独自の技法を見出して制作をされています。
本来なら、いかに逆目にしないように、順目になるようにするのかを作り手は考える。
しかし、その逆をあえて選び出してから、もう17年ちかく経ち、
このような作り方をしている作家は、たぶん自分だけだろう、と羽生さんはいいます。
今回の作品は、最近は伐採禁止となり、勝手に切ることが出来ないという
ブナの木を使用したものがいくつかありました。
木の姿、サイズを見てから作りたいものを決めると言う羽生さんが
出来るだけ無駄の無いように木を使うときいて、
作り方は逆目でも、木に対しての気持ちに順目の姿勢を感じました。

桃居さんでの個展開催は、もう十回以上。
ジョージ・ナカシマデザインの椅子などが什器として置かれる店内で、
羽生さんの作品は、落ち着いてとても趣のある色合いに映ります。
壁面を使った飾り棚などは、一枚の絵を見ているようで素敵でした。
次回、私が羽生さんの作品展を拝見するのは、
来年の高橋禎彦さん(ガラス)との二人展でしょうか。
どのような作品を見ることが出来るのか、今から楽しみです。

会場風景

Photo & Reported by m.makino