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Exhibition Report / Reported by m.makino

工藤 茂喜・内堀 豪 二人展「へぎのうつわ・銅のオブジェ」
2011.2.2-2.8
@日本橋高島屋/東京
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工藤 茂喜・内堀 豪 二人展「へぎのうつわ・銅のオブジェ」

工藤さんの開催中の展覧会、「工藤茂喜・内堀豪展」を拝見してきた。
場所は、日本橋高島屋6階の美術画廊のオープンスペース。
工藤さんとは、初めて会う。

挨拶を交わしたとき、工藤さんの爪には漆が染みついているのが見えた。
製造業をしている自分は、そういう手がかっこいいと思っている。
自分がごっつい手をしているから、どっかで仲間意識が働いている。(笑)

会場風景 会場風景 会場風景

工藤さんに作品を見る前に自分が思っていたことを、いくつか聞いてみた。
そのほとんどは、製造工程について。
これは自分の癖なんだけれど、ものを見るとき、どうやって作られているか必ず想像し、疑問が湧いてしまう。

へいだ後の内側を、どうやって成形しているのか。
へいだ木肌の処理は、どうしているのか。
作りたい物は、いつどの時点で構想するのか。
外側のラインを、どうやって円状に持っていくのか。
工藤さんは、どの質問にも丁寧に詳しく答えてくれた。

へいだ後の内側の成形作業は、外側の何倍も時間が掛かる仕事だと思う。
でも、どの作品を見てもきれいに成形がされていた。
ひとつだけ、削り後がわざと残してある作品があった。
それは、へいだ後に割らずに彫り下げていったものだった。

工藤さんは、「凄く大変だったから、もうやりたくないと思った。」と笑って言っていた。
私なら、作家のそんな苦心した思い入れのある作品は余計に欲しくなる。(笑)

へぎの重ね皿には、お皿のどこかに刻印が必ずある。
刻印の数順に重ねていけば、完璧なスタッキングが完成する。
皿という器から、木というオブジェに変わる瞬間。なんかかっこいい。

工藤さんは、以前から内堀さんのファンだったそうだ。
二人展のお話を頂いた時に、相手として内堀さんを希望したのは工藤さんなのだと言う。
木と銅。有機質と無機質。異質だけれど素敵な共演の空間を作り上げていた。

6階美術画廊のオープンスペースが展示場所というのも、良かったと思う。
デパートは、とかく作家作品を個室という限られたスペースに追いやり、
作品の高級化、希少化を計り、それで購買意欲を掻き立てようとする傾向があると思っている。
そう考えると、今回の展示場所はとてもいい空間だったと私は思っている。

会場には加工途中の木材が、作品作りの説明のために置かれていた。
檜のいい香りがした。
次回は自然光の入る空間での展示を、是非とも拝見したいと思った。

Pickup

脚付へぎ鉢(内錫)

「脚付へぎ鉢(内錫)」 へいだ跡とは思えないような、木肌の作品が気になって工藤さんに訊ねたら、木の枝の別れの部分だと言っていた。 その部分はとても硬くて、へぎでは表現がすることが出来ないらしい。 道具を使って削りだされたその部分は、へぎとはまた違う表情をみせていてアクセントが効いていた。 新芽を伸ばそう、子孫を増やそうとしている木の生命力を感じた。

水紋

「水紋」 緑青錆を施したこの作品は、作品名に現れるように本当に水の流れを表しているような作品だ。 木の「導管」という、耳慣れない言葉を聞いた。 木という植物が光合成をし、葉から水分を蒸散し、その管を通して水分を新たに吸収する。 へぎはその導管の道筋に委ねられて割かていく。 「角材に最初の一刀を入れるまで、何を作るのかが決められない。」と言った工藤さんは、 もしかしたら、毎回、木に遊ばれているのかもしれない。(笑)

へぎ棒箱

「へぎ棒箱」 銀箔を施したこの箱は、いぶし銀のようないい色といい形をしていた。 まるで、蛇が静かに動き出したかのように。 箔を落とした部分には箔の縁跡が残る。 縁の直線と木の導管の流線が交じり合う、文様の面白さを感じた。

Photo & Reported by m.makino