Exhibition Report / Reported by m.makino
佃眞吾作品展
2012年11月9日(金)〜14日(水)
» エポカ ザ ショップ銀座 日々/東京
熊谷幸治 土器展
2012年11月9日(金)〜11月13日(火)
» @桃居/東京
エポカ ザ ショップ銀座 日々で開催されていた、木工作家の佃眞吾さんの個展を見に行きました。
佃さんの我谷盆(わがたぼん)を、以前拝見したことがありました。
今回は個展と言うことで、たくさんの作品を見ることが出来るのを楽しみにしていました。
まずは入口には漆を施していない、栗の木を使った刳物の重箱が飾られていました。
側面には幾何学的な文様が削り描かれていて、箱を重ねることでさらにその文様は広がりを見せていました。
そして、漆を塗らないことで文様と栗の木目とが相まって、見る角度によっては
更に複雑な模様を見て取ることが出来とても素敵な作品でした。
佃さんは、漆を塗らないことについての説明を
「塗らない状態で使っていくことで変化していく様子を楽しんで欲しい、
木は生きていますから育てていって欲しいのです。」
と、そして同じく漆を施していない柿の板皿の木目について、
「水墨画のようにも表現されたその文様は自分では作り出せないし、
作りだせたとしても自然に出来た文様には敵わない。」
と話され、あくまでも木に寄り添った佃さんの気持ちのようなものを感じました。
いくつか種類がある漆を施した重箱と蓋物の中にさざ波の様に見えるものがあり、
表面になにか細工を施してあるのかと思い近づいてみると、それは木の木目そのものでした。
パイソンという洋木で蛇柄とも呼ばれている木で作られていた作品は、
漆を施すことによって柄の陰影が増し、なんとも言えない綺麗な文様を浮き上がらせています。
ライティングの光によってさざ波の様に見え、暗がりの下では
じっとこちらを見据えているような深い色となり、存在感を放っていました。
最後に改めて我谷盆を拝見しました。大きさは数種類、
ためらいなくのみで削られ現れた線は非常に美しく見えました。
伝承され作り続けてきた我谷盆について、佃さんはpanoramaインタビューの中で
「好きだからずっと作り続けていく」と話しています。
今の時代で作る佃さんの我谷盆とともに、新しい形の作品も見ていきたいと思いました。
次に、西麻布の桃居で開催されていた、熊谷幸治さんの土器展を見に行きました。
土器と言えば、だれもが知っている縄文土器や弥生土器に使われる用語。
では、熊谷さんの土器とはどんなもの?そもそも土器の括りとは?と
疑問を携えながら訪れると、そこには様々な「土器」がありました。
焼成温度1000℃以下で野焼きされるのが土器ということで、
そのイメージに合った荒々しい作品もありました。
土そのものの感触を残したようなものや、火や煤が走った跡が残ったものなど、野性味を感じる作品でした。
そして、逆にこれも土器ですか?と聞きたくなるような作品もありました。
それは、漆の作品かと見間違うほどの光沢があり手触りの感触もとても良い物でした。
熊谷さんに聞くと器として使ってもらいたいものは、
蜜蝋を使い表面を出来るだけ磨いて取扱いやすいように仕上げてあるということでした。
両方の土器は、見た目や感触こそ違いますが、手にすると独特の柔らかさを感じます。
荒々しい作品は、手の温もりが作品に移っていくのが分かります。
磨き上げられた作品は、手が吸い付くような感覚を味わうことが出来ます。
どちらも使う人を拒絶しない柔らかさを感じるのです。
他の作品たちとは違う白い作品がありました。
同じ様な土を使いながらも焼成の仕方を変えた作品で、真っ白な肌合い。
明らかに新しい土器のイメージを発していました。
いわゆる土器の作品のイメージを残しているものと、
現代の生活に合わせたもの、そして新しいかたちのもの。
「今だから出来る土器を作りたいんです。」そう話してくれた熊谷さん。
まだまだたくさんの試みを、秘めていそうでたのしみです。
今回のリポートで訪れた個展のお二人は、古くから作られてきた我谷盆と野焼きをした土器という、
「時代」に関わった作品を作る方たちでした。
そのお二人が共通して話されていたのが「今だからできるものを。」という考え方でした。
今だからのそれぞれの「かたち」をこれからも見続けていけたらいいなと感じました。
Reported by m.makino
Archives
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- 2013.05.26 upate高橋禎彦・羽生野亜 二人展@わさらび/東京
- 2013.05.18 upate皆川禎子展・西浦裕太展@SAVOIR VIVRE/竹内紘三展@ART FRONT GALLERY
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