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Exhibition Report / Reported by m.makino

西川 聡 陶展 2012年11月16日(金)〜11月20日(火)  » 桃居

赤の器を多く作り続けている西川聡さん。西麻布桃居さんで開かれていた新作個展に行きました。panoramaインタビューを先に読んでいたので、西川さんが考える赤・黒・白の原始的な色とは、どの様なものだろうと楽しみにしていました。

会場風景

並んだ作品群を見ると、確かにそこには三つの色がありました。 けれど、それらはとても複雑な色をしていて、一概に赤とか黒とか言えない色をしているものがありました。赤には黒の深みを感じ、黒には燻し銀のような渋さを感じ、白の奥にはなにやら秘めた色が見え隠れしていたのです。

会場風景

どうやったらこんな複雑な色合いが出るのだろうと、制作過程について西川さんにお話を聞きました。通常、素焼きをした器に釉薬をかけ本焼きするのが工程ですが、西川さんの工程は本焼きの後に銀彩を施しもう一度焼き、そして漆を塗り込むということでした。
陶器に施した色の上に銀を塗ることで色の深みを出し、塗った銀を磨かずにさらに漆を塗ることで、さらにもっと複雑な色合いが作られる。
艶やかさを感じる漆の光の奥に、時折きらりと光ったそれが隠れた銀だとは、言われなければ気が付かないかもしれません。だけど、何だろう?何かが隠れている?と、使い手に何かを考えさせるような雰囲気を持っていました。そして、その奥深さとは対照的に、器は程よい重量感で使いやすさを感じました。

会場風景

中国茶器を思わせる作品は、白い湯呑や注器を組み合わせた茶器セットでした。一見白に見える作品も手に取ると隠れた銀の存在があり、ここにも西川さんのこだわりがありました。偏壺(へんこ)の作品にも、深みのある色が展開され和とモダンの両方が感じられ、置き場所を選ばない楽しさがありました。プレートは、お皿でありながらそれ自体が抽象画のような雰囲気を醸し出しているので、料理使いの他に飾り皿としての使い方にも合う作品だと思いました。

会場風景

非常に手間をかけた方法を15年近く続けていることを、照れ笑いをしながら話す西川さんはどこかシャイな方のように感じました。採算性を上げることよりも、ご自身のこだわり抜いた複雑な色合いを表現し続ける西川さんの作品は、渋さとかっこよさの両方を持ち合わせているところが魅力のように思います。

会場風景

Reported by m.makino