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Exhibition Report / Reported by m.makino

工藤 茂喜個展「へぎのうつわ」
2012.3.14-20
@日本橋高島屋/東京
» 日本橋髙島屋6階美術工芸サロン

三人のレースガラス

日本橋高島屋で開かれている『工藤茂喜「へぎのうつわ展」』に行ってきました。
工藤さんの作品を拝見するのは、昨年の2月に開かれた『工藤 茂喜・内堀 豪 二人展』、
そして暮れの『酒器展』と、今回で3回目になります。

今回は、拭き漆、朱色、緑青錆、白錆などのほかに、金や銀の箔を施したもの、
錫を蒔いたもの、そして新色の鉄錆色の作品などが並んでいました。
会場風景

緑青の丸皿作品を見ていると、斬新でいい色だな~と見とれてしまう。
朱色の重ね皿を見ては、鮮やかな朱の持つ迫力を感じずにはいられない。
そして、白錆の作品を見ると、渋いその色に見とれてしまう。
会場風景

錆の作品は、外側は艶消しで内側は艶有りの組み合わせをしている。
外側は、錆漆と言われる漆芸の下地技法を用いている。
砥の粉と生漆を練り合わせたものを、生地に塗る。正確には塗るというより摺り込んでいる。
それをそのまま乾燥させると、表面は艶消しのマットな仕上げとなる。
それと対比するように内側は、漆を刷毛塗りで何度も塗り重ね丈夫な塗膜を作り上げている。
「漆=艶がある。」という一般的な見方以外のかたちを、工藤さんの作品では楽しむことが出来る。

通常の漆が空気にあたり、年々色が鮮やかに変化をしていくように、
鉄錆の施された作品も、実際の金属が腐食して変色していくのと同じような変化をする。
その変化を使いながら楽しんで欲しいと工藤さんは話してくれた。

工藤さんの作品の魅力は、漆の色の面白さもさることながら、
ヒノキの素材がもつ形の美しさや自然の勢いというものを、うまく作品に生かしているところだと思う。
最初の一裂きをしてから、作品が出来上がるまで、生かすか否かは工藤さんの腕次第なのだと思う。
工藤さんが作り上げるというよりも、彼とヒノキによって作り出された作品という表現が似合うかもしれない。
会場風景

今回の作品たちの中で、個人的に私が好きだったのは小箱や香箱の作品。
小さな作品ではあるけれど、木の「節」の影響を受けて作り出された箱たちのかたちは、
思わず撫でたくなるような何とも言えない色っぽいラインを作り出している。
お香を入れて飾られていた作品もとても素敵で、玄関や居間に飾りたい作品である。
会場風景

豪華に金箔を施した小箱には「宝箱」と記されていた。
確かにこれだけ煌びやかな箱は、宝箱以外には考えられそうにない。笑
ほかに「水鼓」「獣杯」「雪渓」などの作品名を納得させるかたちの作品が多く並べられていた。
会場風景

私が会場を訪れた時、あるお客様が工藤さんからへぎの制作工程などを説明聞いていた。
一通り説明を聞いて、その工程の面白さと大変さに感心されていたお客様は、
自分への誕生日祝いにと酒器を買われていた。様々な漆の色とかたちを前にして迷うお客様。
その気持ち、よくわかります。

Photo & Reported by m.makino