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インタビュータイトル

Interview 津田清和「ガラスと器と探究心」 4/6

聞き手:山本忠臣「ギャラリーやまほん」オーナー / 文・構成:竹内典子 / Jun. 2013

人との出会いとその後の縁

山本 僕が津田君の作品を初めて見たのは、滋賀県にある「MIHO MUSEUM」のショップでした。展示のきっかけは?

津田 ちょっと経緯は長くなりますが、まず卯辰山工芸工房の2年目に、染め工房の友人から松本クラフトフェアに出品するといいという話を聞いて、とりあえず松本クラフトフェアを見に行って、翌年に出品したんですね。

山本 その時はファインアートではなく器を?

津田 器です。シンプルなグラスとか、一部すりガラスにしたものとか。

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山本 初めてクラフトフェアに行った時、どう思いました?

津田 最初はすごく抵抗がありました。周りからの声も聞こえてきて、専門員の人もクラフトフェアなんて何で行くのみたいに言われて。でも、僕は娘も生まれていたから、自分の生業を真剣に考えないといけなくて、背に腹は代えられないという思いで行ったんです。ちょうどその年に、松本市美術館で「素と形」という展覧会をやっていて、それがめちゃくちゃよくて。クラフトって何だろうということも、金沢にいるとちょっと工芸色が強すぎるんですけど、でも結局ものづくりやろうという僕の考えもあって。そんな中であの展覧会を見て、自分のものづくりについていろいろと考えさせられました。

山本 僕もその展覧会を見に行きました。クラフトフェアでは出会いはありましたか。

津田 松本クラフトフェアでは、当時「スパイラルマーケット」のキュレーターをされていた堀尾みゆきさんと出会って、蓋物展という切り口の展覧会に誘っていただきました。そして、その蓋物展を見てくれた滋賀県長浜にある「ギャラリー季(とき)の雲」の中村さんとご縁ができて、関西でも展示させてもらって、その時にMIHO MUSEUMの学芸員の方も見に来てくださったんです。それでミュージアムショップに作品を置いてもらうようになって、それを山本君が見てくれたんですよね。

山本 僕はMIHO MUSEUMのショップに定期的な納品があり、津田君の作品を見るたび、気になっていた。僕もギャラリーをやっているのでわかるというか、津田君が時代の空気とか意識しないところで自分のものづくりをやっていると感じていました。

津田 そうだったんだ(笑)。僕はその頃、逆に「やまほん」は自分のものを扱ってくれないだろうなぁと勝手に思っていました。

山本 MIHO MUSEUMの方からも津田さんを紹介しますと言われていたけど、いつか会うと勝手に思い込んでいた。ある時、僕のギャラリーで芳名帳に津田さんの名前を見つけて、そうかなと思って僕から声をかけたんですよね。

津田 やまほんにはそれまでも何回か来ていたんだけど、いつも僕は芳名帳に書かなくて。その時はたまたま声をかけられて名前を書いたんですね。

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長期の展覧会

山本 それでお互いに顔がわかって、ちょくちょく会うようになって。やまほんでは2012年1月から3月まで、1か月毎にテーマを決めて、3部作からなる津田君の展覧会を行いました。

3ヵ月間ですから、作品の数をそろえる必要があるし、テーマに合わせてどこまでできるかという試み的な部分もある。テーマを決めると、何をあまりつくっていないかとか、何が不得意かとか、そういうものがわかったりもする。作家さんをある意味追い込むことで、新たに出てくるものとかありますし、可能性が見えてきたりします。津田君の時は、用途でグラス系、鉢や皿系、蓋物や保存器などのいわゆる容器、この3つにテーマを決めて行ったんですけど、皿はあまりつくっていないとかいろんなことがわかってきて、それも面白かったですね。

津田 陶磁器と違って、ガラスは一度にたくさん制作できるものではないので、プレーンなものだけなら数をつくれても、加飾のものもありますから、すごく時間かかります。かなりしんどかったです(笑)。

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ギャラリーやまほん http://www.gallery-yamahon.com

山本 津田君は以前からバラエティに富んだことをする作家さんですし、技術があって、つくられるものの幅の広さも魅力的。僕自身が総体的に見てみたかった(笑)。

津田 月毎にテーマを分けながら、3か月かけて作品を網羅していったので、僕にとっても系統立ててものを見られるいい機会でした。

山本 その後6月には、京都のやまほんでも展覧会をしてもらって、去年はかなり無理を言ってたくさんつくってもらったんですけど、そこで津田君のいろんな可能性を僕は感じました。僕はギャラリストとして、その作家さんの感性を引き出したいという思いが強いし、時代のタイミングや津田君の変化なども含めて、今が一番いい時期だと思い、今年も6月には、伊賀のやまほんでの展覧会をお願いしました。

津田清和 硝子への眼差し

津田清和 硝子への眼差し

2013/6/8(土)〜7/21(日)
@ギャラリーやまほん

会期中休廊日 火曜日
回廊時間 11:00 - 17:30

gallery yamahon
518-1325 三重県伊賀市丸柱1650
tel/fax 0595-44-1911
http://www.gallery-yamahon.com/