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小さなことを細々とつくっていく、
そこがバーナーワークの魅力。 -
井上
皆川さんはバーナーと宙吹きの両方で制作されていますが、今、作品を大きく分けるとどのようになりますか?皆川
バーナーワークでは、昆虫、フィギュア、ボトルで、宙吹きでは、果実、パーパーウェイトなど、吹き場でつくりたい物です。井上
バーナーと宙吹きのそれぞれの魅力は?皆川
バーナーの一番の魅力は、小さいことを細々とやっていけるところです。 宙吹きは、ガラスの性質を使って、理に適っていることを最も効率よく行える技法だと思います。単純に、やっていること自体が楽しいので、スポーツの楽しみに似ている感じです。出来上がる物も、バーナーとは違うボリュームがありますし。私の場合、つくりたい物の大きさによって、バーナーより吹きの方が自然だろうと思うことがあったりするので、それでバーナーと宙吹きの両方をやっているんです。井上
バーナーワークから制作を始めたことは、作家として運命的だったという気がしますか?皆川
します。しかも最初にやったのがバーナーブロー※22。とんぼ玉ではなく、バーナーブローから入ったというのが大きかったと思います。最初が東急ハンズの講座でしたから、まさかバーナーワークがこんなにマイナーなこととは思っていませんでした。井上
十数年前ではバーナーワークを知っている人自体、非常に少なかったでしょうね。最初に作品としてつくった物は何ですか?皆川
一日教室で習ったバーナーブローのボトルです。その次に、フィギュアと昆虫を同じような時期に始めました。昆虫はトンボしかつくっていませんでしたが、その後、フィギュアを本格的にやるようになり、さらに昆虫の種類を広げていきました。
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井上
フィギュアの場合、モチーフがピエロや童話の登場人物など独特ですよね。皆川
ヨーロッパ的なカーニバルとか、ファンシーではない感じのメルヘンの世界が好きなんです。絵本作家ではエロール・ル・カイン※23、カイ・ニールセン※24が好きです。マザーグースやグリムも好きです。あまり日本の感じではないです。井上
子どもの頃から、そういうものが好きだったのですか?皆川
はい。そうです。作家名は忘れてしまいましたが、小さいサイズの本で『草色の物語』『黄色の物語』など色でシリーズになった本があって、民話などが書かれていて好きでした。井上
フィギュアづくりで注意していることはありますか?皆川
全体のバランスと、不自然な動きにならないように、ということです。バーナーでガラスを扱うと、ぐにゃぐにゃして自由な分、あらぬところで曲がってしまう。肘じゃないところで腕が曲がったり、脛が曲がったり、逆に向いちゃったりも。人体として不自然にならないよう気を遣います。井上
そういう勉強はどうやって?皆川
筋肉の造形、骨格などを本で見ます。ダ・ヴィンチのデッサン集とか。私が手に入れたのは、絵を描く人や彫刻をする人のために、人体解剖を説明した本。そういった本や、フィギュアスケートも参考になります。 -
フィギュアは
ヨーロッパ的なカーニバルや、
ファンシーではない感じの
メルヘン世界。
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トンボの透けるような羽を
ガラスで見せたい、
それが昆虫づくりの始まり。 -
井上
では、次に昆虫についてうかがいます。始まりがトンボだったのはなぜですか?皆川
昆虫が好きだったわけではなくて、トンボの羽がすごくきれいで透けていて、これをガラスでつくったらきれいだろうなぁと。だから他の昆虫をつくろうとも思わず、トンボだけをつくっていました。井上
何がきっかけで広がったのですか?皆川
やはりコスタンティーニさんのワークショップを受けたことです。その前から彼のつくる昆虫作品は見ていたんですが、自分がつくるっていう感じはあまりなかったんです。でも、目の前でつくられると、マジックのように突然出てきたというんじゃなくて、ちゃんとステップを踏んでつくり上げていくものだというのがハッキリしました。あぁ、細かい繊細なものでもつくれるものなんだぁって。以来、昆虫は造形として面白いので、種類が増えてきました。井上
トンボの次につくったのは?皆川
オサムシ※25です。甲虫※26系はガラスに似合うと思います。