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Interview 小西 潮

ガラスを織る

僕とアシスタントの能力を
合わせて仕事を考えた結果、
今までにない方向性が生まれた。
インタビュー風景:小西 潮


2010年3月開催の小西 潮 ガラス展「Tiny Tea Party」(Ecru+HM)の出品作品
2010年3月開催の小西潮ガラス展
「Tiny Tea Party」(Ecru+HM)の出品作品

牧野
いま、新たにつくってみたいかたちはありますか? 2010年のエクリュ※11の個展では、作品の口を切る角度なども変わっていましたね。

小西
あの時は、トルコからアイリンというアシスタントが来ていたのですが、トルコの大学に出来たガラス科一期生だったので、彼女にはやれること、やれないことがはっきりしていた。そこで、アイリンと僕の能力をあわせて考えられる仕事、折り合いのつく場所はどこだろう?と考えた結果、今までに無い方向性が出てきたんです。

牧野
出来ることが限られていたということですね。

小西
たとえば、ワイングラスなど凝った仕事は難しかったのでやめました。とはいえ、彼女に色々な可能性も示してあげたかった。それで、自分が考えつく色々な方法を使って、特に加工によって最終的な仕上げを決めていくという仕事を増やしました。吹きガラスには自由度があるんだということを見せたかった。それでよく考え抜いたんですね。ポンテの位置をずらして切口を斜めにしたり……。

牧野
その時の作品も好評でした。回り道をして新しい道が開けた感じですね。

小西
アシスタントというのは、作業をするうえで密度の濃い存在なんです。もしアイリンがもう一年いたら、また色々なことを考えたかもしれない。実際にアシスタントと意思の疎通をはかりながら仕事を進めるので、人が変わると方向性がずいぶん変わります。

牧野
作業を拝見してそう思いました。アシスタントと息がぴたりと合わないと出来ないものですね。言葉にならない合図があるような……。

小西
我々は4本の手で作業をするんです。たとえば、江波と小西の関係で10年やったから出来ること、というのがあるわけですね。 それでも、一日一日違う。昨日はうまくいったのに今日はだめだとか。それにどれだけ気がついて修正するか、それをわからないと。

牧野
潮さんは、ジム・ホームズのアシスタントをしていた時にそれを学んだのですね。

小西
そうですね。当時ジムの工房では、僕がファースト・アシスタントで江波がセカンド・アシスタントを務めていました。 最終的なアシスタントの仕事は注文を見てギャッファー(親方)のスケジュール管理をすること。 足りない材料を揃えて、いつまでに何をつくればいいのか、江波と小西で考えていたんです。 アシスタントはギャッファーがどこへ進もうとし ているのか共感しなくてはいけない。 親方の2本の手に、自分の2本の手を加えて4本で動く。ジム、小西、江波であれば6本です。 3人が一緒に動くことで何かはっきりしたオーラが出る時がある。 スタートからラストまで完璧な調和があって、涙が出るほど美しい工程があるんです。そういう時は奇跡だなと思う。

我々は、4本の手で仕事をする。
小西と江波の関係だからこそ、
出来ることもあります。
工房風景:小西 潮

※11:Ecru+HM(エクリュプラスエイチエム)
銀座にあるギャラリー

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