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Interview 出和絵理 聞き手:井上典子 文・構成:竹内典子

心が癒される美しい“場”をつくりたい

自分の好きなものを
集約させた世界観で
ものづくり。
インタビュー風景

井上
制作において、どういうものに関心がありますか?

出和
レゴブロックに始まり、絵画、立体や構造体に興味がわき、デザインや建築が好きになって、フォルムの美しさにも惹かれるようになって、ファッションも大好きで…。今も彫刻家やデザイン関係の友人、建築家を目指している友人など、自分の興味ある異業種の人と話すのは楽しいです。それによって新たな考えや世界を知り、視点を得ることができますし、分野は違えども世界は必ず繋がっていますから、他分野を知ることは刺激であり、とても重要な機会です。最終的に場づくりとか空間づくりをしたいということもそうですが、今はいろんな自分の好きなものを集約させた世界観でものづくりをしていると思っています。

井上
ファッションはどんなところが好きなのですか?

出和
いちばんは、ショーの世界観です。初めてシャネルのオートクチュールのショーをテレビで観た時に本当に驚いて、それをきっかけにショーの空間世界をつくり出すデザイナーやモデルや服が好きになりました。

井上
建築家で特に好きな人は?

出和
そこまで詳しいわけではないのですが…。レンゾ・ピアノです。

井上
興味のふり幅が広いですね。

出和
自分の中では、好きな作家やデザイナー、建築家などはすべて一つの世界観でつながっているんです。私は基本的には多くのことに無頓着なんですが、自分の持ち物や身につける物には多少のこだわりがあります。それは色であったり、シンプルでフォルムの美しいものであったり。そういう徹底的に好きな世界観があって、そこに自分も憧れていて、入り込みたいという感じです。また、靴下も肌着も服もバッグもトータルで合っていないとストレスを感じます。そういう神経質さは、これまで自分の作品制作を続けてくる中で、徐々に細かくなってきたものなので、おそらく自分の感性が洗練されてきたという面もあると思います。作品をシンプルに、極力そぎ落として美を追求してきましたから。

井上
面白いですね。これからしばらくこの作品を続けていきますか?

出和
新しい展開というかイメージが湧いてきたところです。それは先ほども話した「光景づくり」です。物づくりによっての場づくり、そこに力を入れていきたいです。

井上
これからが益々楽しみですね。今日は有り難うございました。

作品写真

インタビューを終えて

出和さんの作品を初めて見た時、心が揺さぶられる思いがした。
繊細で美しく、彼女の言う"場"が"世界観"が表現されていた。
それは、海沿いの北陸の風土に育まれた彼女の感性と、
柔らかで先鋭的な資質が、生み出したと、話しを伺って納得。
好奇心旺盛で、興味の幅も広い論客へのインタビューはとても刺激的で楽しかった。

井上典子

女性誌のリビングページ担当編集者としての活動の後、流通業界においてリビング分野の企画・プロデュースの仕事に携わる。2000年4月、作り手と使い手の間を介する(=仲立ちする)場として「ギャラリー介」を渋谷区東にオープン。ガラス、陶、木、金属、布など幅広いジャンルの作家の作品展を開催。2008年6月にギャラリークローズ。2010〜2011年までpanoramaのプロデュースを担当。

出和絵理