つながりの器、その先へ 〜唐津・有田の6人の作家〜
文・構成:竹内典子 / Sep. 2016
1616年、有田で日本初の磁器が誕生してから、ちょうど400年を迎えました。唐津、有田にて、その歴史を新鮮なまなざしで見つめ直し、新たな器づくりに向き合う6人の作家がいます。梶原靖元さん、山本亮平さん、山本ゆきさん、竹花正弘さん、浜野まゆみさん、矢野直人さん。
6人はそれぞれ、心惹かれる古陶との出会いから、その魅力の源を知りたいと、古唐津、初期伊万里、古伊万里、さらに韓国、中国などの古い焼き物を研究しています。探究の目は、素材へと深まり、自分の手で原料づくりにも取り組んでいます。
常識にとらわれることなく、まっさらな目で物を見ていくと、新しい見え方ができたり、先人の足跡を見つけられたり。古の陶工たちが、もっとよい器をつくろうと、憧れや情熱をもって試行錯誤した様子も感じられるそうです。
時代を超えて、陶工たちの想いをつないでいく、そんな作家と器をご紹介します。
2016年、2017年は、各地のギャラリーで、グループ展が開かれます。
*出展作家やスケジュールなど、詳細は各ギャラリーにお問い合わせください。
- 2017.9
- やまほん/京都URL / ☎075・741・8114
- 2017.5.18-29 ★終了しました
- 夏至/長野URL / ☎026・237・2367
- 2017.2.10 - 2.14 ★終了しました
- 桃居/東京URL / ☎03・3797・4494
- 2016.9.23-10.2 ★終了しました
- KANKEIMARULAB. /石巻URL / ☎0225・22・0151
- 2016.7.2-7.11 ★終了しました
- sumica 栖/横浜URL / ☎045・641・1586
梶原靖元
- 1962年
- 伊万里生まれ
- 1980年
- 有田工業高校デザイン科卒
- 1986年
- 唐津の太閤三ノ丸窯に弟子入
- 1989年
- 大丸北峰氏に師事、
煎茶道具を習う - 1995年
- 唐津市和多田にて独立
- 1997年
- 佐里大谷にて穴窯築窯
- 2003年
- 韓国にて研修
- 2004年
- 韓国古窯跡視察
「古唐津研究会」発足 - 2005年
- 中国の地質巡検
山本亮平
- 1972年
- 東京生まれ
- 1998年
- 多摩美術大学油絵科卒
- 2000年
- 佐賀県立有田窯業大学校短期終了
- 2007年
- 有田にて開窯
山本ゆき
- 1978年
- 長崎県生まれ
- 2000年
- 佐賀有田窯業大学短期修了
- 2016年
- 佐賀県有田町にて制作
竹花正弘
- 1974年
- 東京生まれ
- 2000年
- 唐津のあや窯にて3年間修業
- 2003年
- 唐津市厳木町に割竹式登窯築窯
- 2004年
- 初窯焚き
浜野まゆみ
- 1974年
- 埼玉県川越生まれ
- 1998年
- 武蔵野美術大学日本画科卒
- 2000年
- 佐賀県立有田窯業大学校卒
伝統工芸士 秀島和海氏に師事
李荘窯 寺内信二氏に師事 - 2001年
- 川越にて開窯
- 2015年
- 有田に拠点を移し作陶
矢野直人
- 1976年
- 唐津生まれ
- 1994年
- アメリカに5年間留学
- 2002年
- 佐賀県立有田窯業大学校卒
- 2003年
- 佐賀県立有田窯業大学校嘱託講師
- 2004年
- 自宅、殿山窯にて作陶
- 2008年
- 韓国にて半年間作陶
唐津・有田の4人 梶原靖元 浜野まゆみ 矢野直人 山本亮平
open 11:00〜18:00
close tuesday + 5/17 wed. 5/31 wed.
唐津、そして有田は、静かな街でした。
暑い暑い真夏の日、私たちは海に囲まれた、
このやきものの街を訪ねました。
唐津城から玄界灘を眩しく臨み、有田では今も残る古窯を巡る。
唐津焼を使われている料理屋さんにて、
皆の盃を持ち寄り、料理とお酒に舌鼓。
やきものというものに、改めて魅了され、
熱心に身体で語る4人に、強く心を動かされた旅でした。
唐津、そして有田の陶磁器は、
手に収まりが好く、料理映えし、酒がついついと進み、
手に包み込まれる穏やかな品格があります。
陶工の洒落と探究心。
それは、この4人衆にも受け継がれているようです。
有田にて日本初の磁器が誕生し、401年。
旅でのやきものの体験と、4人の陶工の眼差しを、
皆様と共有できましたら幸いでございます。
夏至
〒380-0841
長野市大字長野大門町54 2F
tel / fax 026-237-2367
www.janis.or.jp/users/geshi/170518aritakaratsu.html
唐津四人展
梶原靖元 矢野直人 山本亮平 浜野まゆみ
対州白土。この土、土のようで土にあらず。石のようで石にあらず、非常に堅し。ゲンノウを持って打ちくだき、陶土とす。出来上がった作品が、対州白土盃、です。
- 梶原靖元
昨晩から窯焚。焚きはじめには窯の湿気のなか白い目にしみる煙がでます。半日程はゆっくり温度を上げ煙もだんだんグレーなちょっとツンとした匂いがし、釉薬が溶け始める頃にはもくもくと黒い煙と炎が勢いよく出て懐かしい匂いがします。そろそろ一の間に移るかもう少し胴木間を続けるか悩みどころです。
- 矢野直人
初源の伊万里について考えると、陶器と磁器の区別などなくて、シンプルでいいものだなと思います。
- 山本亮平
有田町の古窯跡には、伊万里と共に唐津の陶片があります。唐津焼をつくった朝鮮陶工が白磁の原料をみつけて、古伊万里を焼いたといわれています。最近、ヤキモノがとても美しく感じます。
- 浜野まゆみ
桃居
03-3797-4494
東京都港区西麻布2-25-13
●地下鉄日比谷線六本木駅より徒歩10分
都バス西麻布バス停より徒歩2分
http://www.toukyo.com
竹花正弘 浜野まゆみ 矢野直人 山本亮平
有田・唐津 四人展
有田で初めて磁器が生産されてから400年目の今年、現代における有田・唐津の精髄ともいえる作品が石巻に集まります。浜野さんは糸切成形、山本さんは初期伊万里、竹花さん、矢野さんは古唐津と、アプローチの仕方はそれぞれ異なるものの、4人に共通しているのは、400年前の原料、技術にできるだけ忠実であろうとする姿勢です。現代の器でありながら、自ずと古格が備わる洗練された作品を、会場で是非ご覧下さい。
KANKEIMARULAB.
カンケイマルラボ(イベント期間中のみ営業)
〒 986-0822 石巻市中央2-3-14
tel.0225-25-7081
10:00〜18:00 火曜定休
http://kankeimaru.com/
展覧会に寄せて
9月23日から開催中の「有田・唐津四人展」。
主に、古唐津、初期伊万里の作行を範とした、200アイテム、300点以上の作品を展示しています。
今回ご紹介する四人のテーマは、産地に秘められたポテンシャルを如何に引き出すか、ということ。
それぞれの作り手の着眼点と手法の探究に、単なる過去の技法の再現にはとどまらない、強い作家性が感じられます。
ルーツに遡ることで、現在の陶芸の水準を超えようとする若手作家の試みを是非ご覧ください。
観慶丸本店 須田マサキ
400年目のうつわ展
1616年、江戸初期に有田で日本初の磁器の焼成に成功しました。400年の時が流れた2016年の今、古陶に魅せられ、研究し制作する同世代の3人の作家がいます。磁器完成前の古唐津、雑分の残る初期伊万里、染付の古伊万里へと三人の作家のうつわで一連の時代の流れを感じられる内容です。400年の歴史に学びながらも、3人の目を通して作られたうつわは、みずみずしく次の時代を感じさせるものです。次の400年へ、はじまりのうつわ是非ご覧ください。
浜野まゆみ 山本亮平 矢野直人
sumica栖
http://utsuwa-sumica.com/
〒231-0023 横浜市中区山下町90番1
ラ・コスタ横浜山下公園101号室
OPEN 11:00-19:00/TEL 045-641-1586
みなとみらい線・日本大通り駅 3番出口より徒歩3分
JR京浜東北根岸線・関内駅南口より徒歩10分
» tumblr exhibition photo
展覧会を終えて
作家もののうつわを普段の生活でも愉しんで使おう、という時代が続き、
自分自身も産地にこだわらず、うつわを見ていました。
そんな中で、さらに良いものを作るには歴史を紐解き、
原料から見つめ直そうとする若い世代がでてきたのは、とても新鮮でした。
それが、源流ともいえる唐津、有田だったのは、当然のことなのかもしれません。
他の産地でも同様の若い世代の気配を感じています。
次々に新しいものをという時代から、本質を見つめ直す時代になり、
それに気付いたお客様や、作家の方達まで見に来ていただけた展示でした。
ただ古典をなぞるのではなく、新しい世代が作ったうつわは、
次の時代を感じさせる新しいうつわだったと思います。
是非、たくさんの方にご覧いただけたらと思います。
sumica栖 栗栖 久
展覧会を終えて
もう30年以上も前になりますが、やきものに興味を持ち始めたころ、なぜか古唐津や初期伊万里にこころ惹かれました。難しい理屈は分からなかったのですが、古唐津の寡黙な質朴さや、初期伊万里のもつなんともいえない初々しさ、可憐さにため息が出ました。
その後本を読んで、古唐津や初期伊万里が韓半島から渡って来た陶工たちの仕事であったことを知りました。かれらにとってはまったく未知の土地であった唐津や有田の山を巡ってなんとか良質の陶土や釉薬の材料を探そうとする物語は困難に満ちたものでした。
難しいミッションではあったと思いますが、同時にそれはこころ躍る冒険の旅であったかもしれません。
今回の「唐津四人展」に参加してくださったみなさんに感じたのは、400年以上も前に唐津や有田の山々を横断し縦走した朝鮮の陶工と同質の探究心と情熱でした。
「古唐津風」「初期伊万里風」をめざすのではなく、400年以上も前の陶工たちへの共感と共振が生み出す仕事にしばらく併走してみたいと思っています。
桃居 広瀬一郎