panorama

Exhibition Report / Reported by m.makino

ガラス★高橋禎彦展
2011.3.1-5.8
@東京国立近代美術館工芸館/東京
» 詳細はこちら:Exhibition | 高橋禎彦 | panorama

ガラス★高橋禎彦展 Studio Glass Succession

私が、今年もっとも楽しみにしていた展覧会だ!
ガラスアーティスト高橋禎彦さんの、1980年代の初期から2011年の最新作までを見ることが出来る展覧会。
場所は、北の丸公園内にあるレンガ造りの建物、国立近代美術館工芸館。

会場風景 「面白い。」高橋さんの作品を見て、そう評する人は多い。
でも、それじゃあちょっと物足りない・・・。
前から、後ろから、上から、下から、そして斜めから見て、
「『どこから見たって』面白い!!」
高橋作品に出会うと、いつもそう思わせてくれる。

背伸びして、しゃがんで、ひざまずいて、顔近づけて、
遠くから離れて、覗き込んで、とにかくあらゆる角度から眺める。
ストレッチしながら、感覚で楽しむように。
これが高橋作品の正しい見方。そんな風に私は思っている。勝手に。(笑)

ガラスが溶けて塊り戻るまでの時間と重力を考えれば、
どうしたってこれ無理でしょ~っていうのをやってのけてしまう。
だから、見ていて飽きないし、色褪せない。
「面白いでしょ。」「楽しいでしょ。」って、茶目っけある笑顔で気さくに話をしてくれる高橋さん。
2010年ギャラリーTAOの個展で「とろけること」シリーズに囲まれた空間に入った瞬間、心が躍った。
作品を見ていると、可愛い動物と対話しているかのように、自然と顔がにやけた。
作品に会って笑顔になる。高橋さんに会って笑顔になる。
高橋さんと作品のそんな魅力に惚れている人も多いはずだ。

会場風景
1999年に作られた「Arc」という作品が、
会場に飾られている。宙吹き、キャスト、色被せ、
サンドブラストと4つの技法で作られた作品。
宙吹きとは思えないガラスの厚み、サンドブラストで
浮かび上がる整然と並んだドット、キャストの重量感、
ライティングで透過される色、どこをとってみても
色んな表情が感じられる。
時間を忘れて見入ってしまう、実にかっこいい作品だ。

会場風景 透明な器のシリーズは、高橋さんが作り出す、
「柔らかい」ガラスを一番身近に感じられる作品。
グラス、コンポート、皿、鉢、注器など一堂に見ることが出来る。
作品ごとの距離をとても狭くとっていることが、
その透明感をより際立たせている。
展示の位置が高いので、作品越しに
他の空間を見渡せる演出となりとても素敵だ。

工芸館内の茶室を利用して飾られた小さなオブジェ「花のような」シリーズでは、
床の間のライティングと作品群が、とても良い空間を作り出し可愛らしさがよく出ている。
それとは、対比したように飾られている大きなオブジェ作品は、360度のラウンド状に眺めることが出来、
ひとつの側で見ていたオブジェは、90度、180度と見る角度で表情が随時変わる。
さながら歌舞伎の回り舞台を見ている様だ。
いや、高橋さんならドリフの回り舞台と呼んだ方が喜ぶかもしれない。(笑)

会場風景

ガラスケースに飾られた作品では、ガラス越しの作品の前に立ち
じっと眺めたあとは、展示ケースの横や斜めからの位置や、
ケースの間の隙間に立ち、作品と一緒にガラスケースに映りこむ光景を
一緒に見渡して欲しい。
会場風景
これが、本当に綺麗な光景。

目の前の作品群がケースに写りこみ、
対面に置かれている作品までもが写りこむ。
とっても幻想的な空間が、そこには存在する。
ケースの中に閉じ込められた作品が見せる、
もう一つの素敵な姿だと感じる。

この展覧会を見ていて思い出したこと。
それは、海外の有名な美術館に行ったとき、小学生の子供たちが授業の一環で作品の真ん前の床に陣取り、
皆でスケッチをしていたのを見て、こんな空間で美術の勉強が出来るなんて自由で良いな~。と思ったこと。
高橋展を見ていて、この空間でそれが出来たらいいな・・・と、ふと思った。
近美でそれは出来ないにしても、椅子のある空間ではそこに座り、じっくりとその時間、空間を楽しんで欲しい。

会期中には、タッチ&トークと言って様々な角度から展覧会の見どころを紹介する日が設定されていて、
「さわってみようコーナー」では、高橋さんの作品も触ることが出来るらしい。
高橋作品は、通り一辺倒に見るだけじゃ、勿体ない。
さあ、動きやすい恰好で近美に出かけよう!

Photo & Reported by m.makino