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Exhibition Report / Reported by m.makino

皆川禎子展 @SAVOIR VIVRE/六本木 2013/3/8(金)〜3/17(日)
竹内 紘三・時間軸 @ART FRONT GALLERY/東京 2013/4/5(金)〜4/28(日)
yuta nishiura at SAVOIR VIVRE 2013 @SAVOIR VIVRE/六本木 2013/4/20(土)〜4/28(日)

今回は、個性的な作品を展開する3人の作家の個展をリポートします。

まずは、皆川禎子展「小さき楽しみ〜バーナーワーク〜」から。
バーナーワークによるガラスでできた虫たち。虫がたくさん並んだ展示会場。
虫嫌いな私には、考えただけでも縁遠い個展だと思っていました。

でも、今回あえて見てみたいと思ったのは、
昨年のパノラマイベントで初めて皆川さんの作品を見たとき、
嫌いな虫だと言うことを忘れて、その技術の高さに見とれてしまったからでした。

今回の個展会場は、六本木のサボア・ヴィーブル。
展示作品は目線の高さに近い位置に置かれ、綺麗にライトが当たりとても見やすい空間です。
虫のディテールを緻密なまでに再現した昆虫シリーズと、
ウサギやカエルなどをピエロや王子に見立てた人形シリーズなどが並んでいました。

虫たちはどこまでもリアルに表現され、今にも動き出しそうな雰囲気を醸し出しています。
『ワクワクするんです。今にも動き出すんじゃないかって本当にドキドキするんです。
それに、本物だったら動いてしまってこんなにじっくりと観察が出来ないので、
それが出来ることが嬉しいんです。』
会場に居合わせた男性のお客様は、まるで子供のように無邪気な笑顔でそう話してくれました。
そんなにも昆虫好きの気持をとらえ、心躍らせるんだと驚きました。

会場風景

人形のシリーズは、動物が擬人化し物語の一部を切り取ったような光景を描いています。
待ち合わせの時間に遅刻しているのか、うさぎが時計を気にして走っていたり、
王子になれたカエルが、気取った様子でポーズをとっています。
もちろん虫同様に、細部に手抜きはありません。
彼らの腕や足は、人間の骨格や筋肉と同じ作りをしていて、
手首や足首、ふくらはぎや太ももなどがきちんと表現され、
本当に彼らが演じているように生き生きとしています。

会場風景

常に冷え固まっていくガラスの性質と向き合いながらのバーナーワーク制作は、
様々な制約があるように感じますが、完成度の高い皆川さんの作品を見ていると、
いろいろな可能性を感じます。
日本では、バーナーワークという技法で作られるものの認知度はまだ低いと思いますが、
皆川さんのような技術のある方の作品を通して、たくさん広まって欲しいと思いました。

竹内紘三展「時間軸」は、代官山アートフロントギャラリーで開かれていました。
幾何学的な形のオブジェのシリーズをメインに、展示が構成されていました。
従来から取り組んでいる白磁造形の“Modern Remains”は、
狭いカウンターでも飾れるくらいの小さなものから、
広間に見合う様な大きなサイズのものが展示されていました。

作られた幾何学的なフォルムの一部をあえて壊して作り上げられた造形は、
一見すると、とてもシャープな印象に感じられますが、
ライティングによって生まれた影を交えて見ると、柔らかさも感じさせてくれます。
釉薬を施していない白磁が持つ、光との調和の姿のようです。

会場風景

白磁と対局する陶土の造形“現跡・今蹟”は、竹内さんが
『遺跡のように時間を感じさせるものが作りたい。』と話されていた作品シリーズです。
鉄が風化して錆びたような表情、石が朽ちて汚れたような様子をした作品は、
人工的に施されたものとは思えない自然の雰囲気を醸し出しています。
時間が経過したものがもつ、優しさや安心感のようなものを感じます。

会場風景

朝の陽ざしや昼間の明かりで白磁を照らし、夜の明かりで陶土を照らして、
一日という時間を感じながら、眺めていたい作品たちでした。

西浦裕太展「yuta nishiura at SAVOIR VIVRE 2013」の会場は、
皆川さんと同じサボア・ヴィーブルでした。
以前から取り組んでいる"tale"や"banquet plate"のシリーズ作品、
動物などモチーフにした心象風景を描いた新作が並んでいました。

会場風景

会場風景 心象作品には、西浦さんの短い文書が添えられています。
例えば『わたしはただ 草原を彩る 一本の 刺繍糸になりたかった』
作品を眺めてから言葉を読む、読んでから作品を見る。
赤いチューリップと支える手、目で見られるものはそれだけ。
そして添えられた言葉は、草原と刺繍糸。
後あるのは、見ている自分の気持ちです。

会場風景 体のほとんどが布で覆われた作品がありました。
この中の動物は何ですか?と会場にいらした西浦さんに聞いてみると
『何でしょうね・・・。自分でも、何と決めて彫っていなかったので、
好きな動物を想像していただいたらいいかなと思っているんです。』と。
何でしょうね・・・と言った、西浦さんがとても優しく
作品と向き合っているように見えたのがとても印象的でした。

会場風景 『今日は特別に天国を作りますね。』
という文書の一部が添えられた作品は、
階段があり、境界に雲がある山の姿をしたとても素敵な作品でした。
西浦さんのお子さんが、寝起きにつぶやいた言葉だったそうです。
添えられた文書を読んだら、こんな天国の山なら登ってみたいなと思いもっと好きになりました。

造形的な作品は、意図のようなものが作り手によって決められているものと、
そうでないものがあるように思います。
今回の3人の作品は、皆川さんが前者で、竹内さんと西浦さんは後者のように思います。
実用的な用途でない造形作品は、どちらのかたちをしたものであっても、
見る側の嬉々とする気持ちに触れた途端に、
もっと寄り添いたくなるということを改めて感じさせてくれました。

Reported by m.makino