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Exhibition Report / Reported by m.makino

コップ屋 タカハシヨシヒコ
2011.6.18-24
@gallery+cook lab como/東京
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コップ屋 タカハシヨシヒコ

会場風景

自分だけのコップを探しに出かける。
コップ屋 タカハシヨシヒコ展というお店に。
20種、いや細かく分けたら30種は超える。数にして500以上。
一つとして同じものが無い宙吹きのコップたちが並ぶ個展。

コップありき?使い手ありき?
そりゃあ、使い手ありき。
だから選ぶ楽しさがある。

個展初日、売り子の手伝いをさせて頂いた。
12時から19時まで。訪れる人はただただじっくり眺める人。
同じ種類から自分だけのたった一つを選ぶ人。
実際にお水を飲んで口当たり、持ち手の感触を試す人。様々な光景を目にする。

即座に決める人、何時間もかけて選ぶ人。
そこには、その人だけが持つ時間感覚が存在する。
どんな時間感覚がそこに存在していても、
最後に「これにします!」と言った時の皆の顔が笑顔なのが、見ていて嬉しかった。

さて、自分の場合はというと・・・
初日の打ち上げで行くお店で使いたいコップを探していた。
お店は蕎麦屋ではあるが、美味しい日本料理も出すと聞いていた。
だとしたら・・・飲むのは日本酒。

接客の合間に、あれこれ持って、眺めてみる。
ちょっと気になる小ぶりの作品が4つだけあった。
他の作品とは見るからにちょっと違っていた。
クリアでなく、少し気泡が入っていた。

一緒にお手伝いをしていたガラス作家の木越あいさんが、
「これとってもレアな作品なんですよ。」と、教えてくれた。
坩堝(るつぼ)にガラスを入れ溶かし始めて、まだ中が安定していない時の溶けたガラスで作った作品。
時間にして数時間の間にしか出来ないものだと言う。

4つの中から、自分だけの一つを選び出した。
ガラスの流れる様が、模様のようになっていた作品。
これが今日の自分だけのコップで決まりだ。

最初の乾杯はビール。そして、次はいよいよ真打登場。
おもむろにカバンから、洗って、磨いてきた作品を取り出す。
お酒を注ぎ、飲み、そして味わう。

う〜ん、旨い。とにかく、それで十分だ。うんちくなんてどうでもいい。
そんな勝手三昧を隅っこで一人している私を見つけ、笑いながら高橋さんが言ったのは、
「自分の作品がこんな場所にあるなんて落ち着くな・・・。」だった。

初日を迎え終えた作家の色んな思いを感じた・・・。

Photo & Reported by m.makino