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Exhibition Report / Reported by m.makino

木越あいアトリエレポート ~「ガラス攻芸展」に向けて~

アトリエ風景 いよいよ11月16日から日本橋高島屋で、
「攻芸展」が開かれる。
木越あいさん、江波冨士子さん、中野幹子さんの
3人のガラス作家による展覧会だ。
その攻芸展を約2週間後に控えた、
木越あいさんの工房を訪ねた。

隅田川にかかる永代橋近くに、
木越さんが活動する工房
「門仲トキワ荘」はあった。
追い込み制作のなか、
出来上がった作品のいくつかを
見せて頂きながら、いろいろとお話を伺った。

作業場には、出品予定の作品の一部が並べられていた。
今回の展覧会は「器」を主としている。
もともと板物作品を多く手掛けていた木越さん。
器の制作歴はまだ短いので、今回の器というお題を元に、新しい試みにも挑戦をしたという。
従来の木越テイストのサンドブラスト作品だけではない、クリアな器や大きな花器なども制作。
グラスや酒器など、様々なアイテムを取り混ぜて50点ほどが会場に並ぶ予定だそうだ。

作品イメージ
木越さんのサンドブラスト作品は、制作にとても時間がかかる。
外被せ(きせ)したガラスをサンドで削りとり、色合いの陰影を少しずつ少しずつ確認しながら作業を進めていく。
求める絵の具の色を出すために、何度も調合していくかのように。
クリアな作品の何倍もの時間がかかり、作業性が悪いと分かっていながらも、やらずにはいられない。
その果てしない作業の末に出来上がる作品は、やはり素敵だ。

作品イメージ
作品の魅力のひとつである器に描かれた絵。
同じモチーフがあったとしても、同じ絵は存在しない。
それは、まずは器の形を作り、出来た形とそこに表現された色を見て、
そこに何を描き出したいかを考えるからだという。
形と色、そして絵の要素から、お気に入りの1つを見つけて欲しいのだと言う。

イメージ
作品のデッサンを見せて頂いた。
そこには綿密に描きこまれた文様や図案の他、制作にあたっての注意点などが記してあった。
立体の器に描き出された絵は、一面だけを意識している物ではなかった。
内側に映し出された文様、見る側から透けて見える向こう側の文様まで計算し、それを表現している。
これは、時間をかけて描き出すサンドブラストならではのことなのだろう。

作業性は違うものの、この精密な作業は、江波さんと中野さんの作品にも感じるところである。
やはり、この三人展は面白いに違いない。

そう、木越さんと言えば、ユーモラスなモチーフの作品も多く展開している。
オオカミに食べられる子ヤギや、顔色の悪い赤頭巾ちゃんなどのNightmareシリーズである。
今回は器がメインなので、Nightmareシリーズは見ることが出来ないかもしれないけれど、
出品予定の作品の中に、ちょっとユーモラスなモチーフを見つけた。
花びらの中にいる、戦闘服を着た鳥だ。
花を飛行機に見立てた発想をしていたら、鳥にヘルメットと戦闘服を着せてしまったらしい。
やっぱり、そこが木越さんだ。笑

江波さんと中野さんとの三人展は初めての木越さん(江波さんと中野さんは二人展を過去に開催)。
ガラス作家としての歴は長いものの、器としての作品展開はまだ少ない。
器歴の長い江波さんと中野さんを、いろんな意味で意識をしない、緊張しないと言ったら嘘になるだろう。
二人のどういった作品が並ぶのか、その作品たちと自分の作品はどう並ぶのか、
そんな意識の連続の中で、「木越あい」がどう表現するのかを、会場では見てみたい。

木越さんとの会話の中で、私はつい「攻芸展」を「攻撃展」と言い間違ってしまった。
二人で、違う!違う!と笑いあってしまったけれど、それも有りなんじゃないかと思っている。
すでに「攻芸展」のDMからも、戦いが始まっている。
アドバンテージをもつ二人に、挑みかける木越さん。女3人衆の戦いの場だ。
戦闘服を着た「木越あい」はそこにいるのか!?

是非、三人三様の精緻な戦いの場をとくとご覧いただきたい。

Photo & Reported by m.makino

「ガラス攻芸展 木越あい・江波冨士子・中野幹子」
2011.11.16-22
@日本橋高島屋/東京
» 日本橋髙島屋6階美術工芸サロン

「ガラス攻芸展 木越あい・江波冨士子・中野幹子」DM