雲 蓋物

極小の金の粒が描きだす雲の景色。肉眼ではなかなか見えないほどの小さな粒は、一つ一つ描くのではなく、ガラスに焼き付けた金箔(金澄(きんずみ))から粒が残るように削り出したもの。その繊細で途方もない作業に驚きますが「一つの原子が繋がり、物質を作り、世界を作っているのだなという思いで作っています」と由良さん。ふだんから科学者や数学者の随筆や探検家の探検記などを好んで読むそうで、素材と向き合いながら、大きな世界に挑むように物作りをする由良さんらしさが伝わってくる作品です。

｢焼き付けた金澄の表面を同じように削り出しても、金が二重になっているところ、焼き付きの違い、微かなヒビなどの違いで表情が変わってくるのが面白い所です。均一に小さな粒を削り出し、埋め尽くさないと見えて来なかったガラスと金の表情があり、雲は金の粒の削り方を変えて、雲の表情や奥行きを作っています」。

蓋物の用途は自由で「香合をはじめ、いつ見ても心引かれるもの、自分で発見した美しいと思ったもの、新しく出会ったものなどを入れていただけたら嬉しいです」。ガラスとガラスを擦り合わせ、ピッタリと合わさるように作っていて、アクセサリーや揮発性のもの、薬品などもある程度の期間であれば状態を保ちやすいのもガラスの器の良いところだそうです。

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