panorama

Interview 馬越 寿 聞き手:春名香代子 文・構成:竹内典子

精緻につくり込むガラス

初期に出会ったガラス作品は
今も印象深く刻まれている
インタビュー風景:馬越 寿

春名
多摩美の同期の作家さんは、江波冨士子さん、生島賢さんなど、吹くだけではない、つくり込む印象の作家さんたちですね。当時から互いに刺激されるところはありましたか?

馬越
そうですね。当人が言うのもなんですけれど、わりと面白い学年だったんじゃないかと思います。

春名
馬越さんはどういった作家さんがお好きですか?

馬越
初期の頃に見た印象が強いので、日本では伊藤孚さん、池本一三さん、高橋禎彦さん。それから、最初にお話した世界現代ガラス展を見た時から、今もずっと印象に残っているのはアンナ・ディキンソン(Anna Dickinson)さん。

春名
一番影響を受けた作家さんはどなたですか?

馬越
伊藤孚さんだと思います。

春名
外国の作家さんにも学ばれていますが、それはワークショップですか?

馬越
はい。ドイツのフラウエナウへ行きました。ロバート・カールソン(Robert Carlson)さんはアメリカ人の作家で、主に吹きガラスにいわゆるラッカーとかでペイントしたり、金箔を貼ったりして作品にする人です。ゲアハルト・リブカ(Gerhard Ribka)さんはドイツ人のアーティストで、この人にガラス版画を学びました。イージー・ハーツバ(Jiri Harcuba)さんはチェコのグラヴィールの大家です。スーパーです。

春名
ガラスの可能性について、やはりいろいろ勉強されたんですね。

馬越
たくさんのワークショップに行ったわけではないですけど、自分にとって数少ない経験は印象深いものがあります。

春名
ロバート・カールソンさんを見て、塗ってしまってもいいんだと思われましたか?

馬越
私がやり始めたのは、ワークショップを受けてからだいぶ経ってからのことですけれど、そういう影響はあるかもしれないですね。

春名
ゲアハルト・リブカさんやイージー・ハーツバさんからは、どのような影響を受けましたか?

馬越
ガラス版画に集約されていますね。ガラス版画に関しては、多摩美では伊藤孚さんが初めて講義に導入されて、私も多摩美で講師をしているので、無くさないでほしいと、自分がやりますと言ってやらせてもらってるんですけど、他からはやる意味あるのかみたいに言われるところはあって。でも、私自身は、ガラス版画をやる中で見つけたことってすごくいっぱいあるので、学生にも見つけてほしいなって思います。

春名
それは馬越さんがディテールをつくり込む上で、有効な勉強だったということですか?

馬越
単純に、私のしていることは、ガラス版画の制作から得てきたことでもあるんですよね。ガラス版画では彫った原版にインクをのせていくわけですが、その途中段階とか、刷った後、拭き取った後のガラスはものすごくきれいだったりするんです。

春名
そこを見逃さないで、次につなげていくわけですね。

馬越
そうです。版画という目で見れば、たとえば銅版の方が緻密なきれいなものが刷れることはわかりきっているんだけど、ガラスとして10ミリ厚の材料を使うということの中で考えていくと、面白いんじゃないかなと。

春名
なるほど。学校でも教えておられるわけですから、ぜひ講義に残して、次の時代の方たちへ伝えてください。

ガラス版画を学ぶ中で
気付いたことがたくさんある
インタビュー風景:馬越 寿と春名香代子

※3:世界現代ガラス展
北海道立近代美術館企画の大規模なガラス展。1982年から1994年まで3年毎に5回開催。大丸ミュージアム・東京など各地を巡回。

Artist index Yasuhi UMAKOSHI