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Interview 佃 眞吾/聞き手:根本美恵子さん (ギャラリー「日々」 コーディネーター)

求めて出合う、木の仕事

器をのせるもの
テーブルの上で使うもの
佃 眞吾:我谷盆

根本
最近は、器好きの方々が、器をのせるもの、いわゆるお盆や折敷のようなものを希望されるケースが増えています。もともとお盆は、日本の古い家では台所と居間が離れているために、そこへ運ぶという目的で使われてきたわけで、現代の住宅のようにオープンキッチンやカウンターが出現してからは、お盆はちょっと使われなくなりましたよね。それが今、見直されてきています。実感はありますか?


折敷みたいなものをというのはよく言われますね。ランチョンマットというわけではないけれど、敷板でもなくて、料理屋さんでよく使っているような薄いものですね。

根本
ランチョンマットに比べると、折敷は高価ですけれど、布のようにシミがつくわけではないので、ずっと使うことができて、最終的には高くはないのかもしれません。でも、焼き物に比べ木工作品は手間がかかるため、価格が高くなってしまうことを、わかりやすく伝えていきたいと思います。


そうですね。料理屋さんが仰るには、お客様の前に最初から最後まであるのが、折敷と箸置き。ずっとお客様の目に触れるものだから、気にしたいのだと。器は料理が済めば、すぐに下げてしまいますからね。

根本
木地や、漆のものは、使っていくうちに変化はしても汚くはならない。それがウレタンだったり、ある種の塗装だったりすると、剥げていくし、風合もよくない。剥げるものばかりを長年見てきた人には、経年変化による風合の違いは、すぐには信じがたいのかもしれません。特に漆は、高度経済成長期にプラスティックやウレタン塗装が普及したことで、漆とそうでないものとの違いが、表記の問題もあって曖昧になってしまいましたから。そこをもう一度、知識を増やして理解していただけるようにしたいです。


「本漆」という表記もおかしなものですよね。

根本
それと、生活スタイルが急速に変わって、木とつきあう方法が置き去りにされてしまった面もあります。お盆は、置き方や場所によっては木が変化してしまうことを、知らない人も多いようです。お盆は伏せて置いておくとか、直射日光の当たるところにはなるべく置かないとか、ちょっとしたつきあい方があります。


木は変化するものです。家具になってもそうです。

根本
よく木は育った年数だけ動き続けると言いますよね。100年育った木だったら、100年間動き続ける。それは仕方のないところもあるんだけど、なかなかそういうところまでつきあえない。私たちにゆとりがないというか。動いてしまったものに対してのアフターケアというのはよくあることでしょうか?


普通の戸建て住宅では、そんなにないですよ。ただ、ビルや高層マンションの室内とか、密閉されがちな空間は、木が動きやすい。もともと木は地上に生えているから、高い所へ持っていくと、不自然な環境になるわけで、ものすごく乾燥するんです。

根本
ちょっと伏せて台布巾でも掛けておこうかしらと、使う側が心がけてくれるといいですよね。


盆や器になっても、木は植物であり呼吸しているんですよね。

根本
日本人は割り箸をポンと捨てずに後で菜箸代わりに使ったりするくらい、木という素材を大事にしているかと思う反面、そういうものとつきあうゆとり的なものを、今は持てなかったりする微妙なところがあるのかもしれません。


和食の文化は、テーブル上のものによく木を使いますし、白木も使う。一方、石の文化といわれるヨーロッパの人たちにとって、テーブル上の木のものはあまり高級ではないように感じます。あちらは変わらないものがいいという文化でしょう。そういう意味では、日本は変化を楽しむ文化なのだと思います。

盆や器になっても
木は呼吸している
佃 眞吾:インタビュー風景
佃眞吾作品展

佃眞吾作品展

2012.11.9~14
@エポカ ザ ショップ銀座 日々

2012年11月9日(金)〜14日(水)

「木は植物です。
五感で見る事のできる素材。
落ち着きさえ感じさせる木目に
魅入ってしまうことがあります。
昔から、木の文様を「杢」(もく)、
木肌の変化を「産つ」(そだつ)と
愛でられてきました。
無意識のうちに手にとってみたくなるのは、
そのためでしょうね。」
ー 佃眞吾

» エポカ ザ ショップ銀座 日々
03-3573-3417
東京都中央区銀座5-5-13
●地下鉄 銀座駅B6出口より3分